【今月の生産者紹介】吉乃川について

メーカー概要

吉乃川 株式会社

創業 天文17年(1548年)
所在地 新潟県長岡市摂田屋4丁目8番12号
電話番号 0258-35-3000
FAX 0258-36-1107
ホームページ http://www.yosinogawa.co.jp/

吉乃川について

  長岡市の摂田屋(せったや)地区は、江戸時代に現在の新潟市の一部までもを含む広い領地を有する越後長岡藩の中で、天領とされて来た地域で、古くから酒や味噌醤油などの醸造業が多く集まる所でした。
 今回ご紹介する「吉乃川酒造」は、その長岡市摂田屋で1548年(天文17年)創業と言いますから、天領とされる遥か以前の戦国時代から続いている酒蔵です。

吉乃川 外観

旧三国街道

新潟県内で「吉乃川」と言えば知らない人はいないくらい良く知られているお酒です。それは歴史も古く、また酒屋さんには必ずと言っていいくらい どこの町の酒屋さんでも見ることができるほどに浸透していたからなのです。それ程までに県内各地に浸透して行くことができたのは、昭和30年代から取り組んだ大型仕込みによる増産態勢が確立できたからに他ならないのでしょう。
 この大型仕込みを成功させた最大の要因は 自社開発した機械製麹機(せいきくき)であり、しかもそのような増産態勢をとりながらも、昔からの酒造りの手法と心はしっかりと守り続けてきたからに違いありません。 この機械製麹機は、麹箱や麹蓋を使って昼夜兼行で行われていた製麹工程での麹菌の働きで 刻々と変わる麹の温度や湿度の管理を、機械によって行う画期的なものだったのです。こうしてこの酒蔵では、仕込み時期にはどこの蔵でも当たり前だった蔵人の泊り込みを止め、いち早く通勤制にするなど、この業種には付きものの厳しい労働環境の整備にも早くから取組んできたのです。

大型仕込みの設備

酒造米

 吉乃川酒造がこのように古くから酒造りが行っていたと言うことは、そもそも酒造りをするための条件がそこには揃っていたと推測することができます。 事実この酒蔵には敷地内に昔から使われて来た井戸があり、そこからは酒造りに必要なミネラルを多く含んだ軟水が大量に汲み出されていました。
 その井戸の脇には「天下甘露泉」と刻まれた大きくて立派な石碑が建っていることから、この井戸がこの蔵にとって如何に大切なものであったかを窺い知ることができます。信濃川の伏流水と言われるこの水は、現在はこの他に何箇所かある井戸からも汲み上げられ、この工場で使う全ての水を賄っているのです。

酒造りに欠かせない「天下甘露泉」

  米については言うまでもなく、この周辺は県内でも有数な穀倉地帯であり、一部の酒で使用する山田錦以外は全て良質な新潟県産米を使用しています。
 また、幾つもの建物や貯蔵タンクなどが立ち並ぶこの酒蔵の敷地を断ち割るように、幅2m程の一本の通路が少し曲がりながら通っているのですが、これが江戸時代に江戸と越後を結ぶ重要な役目を果たした旧三国街道だと言うのです。原材料の米の運び込みや、出来上がった酒の運び出しなど酒蔵としての 交通の便にもとても恵まれていたのです。

  このように酒造りの条件が揃った場所に立地し、そこで当時は否定的な声の多かった大型仕込みを導入しながらも、昔からの酒造りの大切な部分を しっかりと引き継いできたことが、増産以降もこの蔵の成長を続けさせたのでしょう。とても古い歴史を持ちながら、そこに常に新しいことに 挑んで行くことができるこの蔵は、新潟清酒を代表する銘酒を造り続けることができる本当の老舗酒蔵と言えるのではないでしょうか。

  一方この酒蔵では、特に最近は嗜好の多様化に合わせ多品種少量の生産体制をとっていて、さまざまな食材やどんな料理にも合わせられるよう、 また食事型式や雰囲気などによっても選べるようにたくさんの種類の日本酒を造っています。
 そのように幅広く揃えられている吉乃川酒造の製品の中に、私ども新潟屋が注目しているお酒があります。それは「特別純米原酒 熟成古酒」です。

高橋方夫 製造部長

熟成古酒 美しい琥珀色

 日本酒の古酒と言うのはまだそれほど一般的ではありませが、新酒とは全く違う、時間が創り出す酒の変わりよう、それはお酒の種類や出来具合、 貯蔵温度や保管方法、熟成させる時間などによって、それぞれに異なる変化を見せるものなのです。従ってやってみなければ判らない、というくらいに製品化しにくいものなのですが、 その面白さゆえに長期熟成酒を研究するグループもできているくらいなのです。
 一般的に長期熟成酒には、大吟醸や吟醸酒などを低温で貯蔵熟成させたものと、純米酒や本醸造酒などを常温で貯蔵熟成させたものがあります。 その違いは低温熟成したお酒は、色はそれほど変わりませんが、香りや味の華やかさがグッと落ち着き、丸みを帯びた柔らかさを増して来るのです。 一方常温熟成したお酒は、色が大きく変化し琥珀色と共に艶を増します。そして香りも味も色と同様に大きく変化するのです。

熟成古酒 深く甘い香り

長期熟成を感じるラベル

 この「特別純米原酒 熟成古酒」は、麹米、掛米ともに60%まで精白した米で仕込んだ特別純米酒を、割水をせずに原酒をそのまま瓶に詰めたものを、 常温の貯蔵庫の中で10年間熟成させたものです。上品な琥珀色をしたそのお酒から仄かに立つ香りは、果物を煮つめたような甘酸っぱさが老成したような 豊かさと安らぎを感じさせます。そして味も、酸味と甘味とが調和した紹興酒にも似た奥深く円やかな味わいです。
 食中酒と言うよりは、食後にゆったりと寛ぎながらこのお酒の持つ微妙で複雑な味や香りを楽しむ、そんなお酒なのではないでしょうか。
 またこのお酒、開封せずにこのまま紫外線の当たらないところで保管しておけば、更に熟成が進行し、古酒の変化をご自分で楽しむこともできるのです。
 古くからの酒造りを大切にしながらも、常にチャレンジし続けるこの老舗酒蔵のこれからの酒造りがとても楽しみに思えた今回の取材だったのです。
(資料協力:吉乃川株式会社)

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