池浦酒造について

メーカー概要

池浦酒造株式会社

創業 1830年
所在地 新潟県長岡市両高1538番地
電話番号 0258-74-3141
FAX 0258-74-2882
ホームページ http://www.ikeura-syuzo.co.jp/

池浦酒造について

司馬遼太郎の著書「峠」の中で主人公の河井継之助は、越後が生んだ英雄は上杉謙信と釈良寛だと言っておりますが、 その釈良寛終焉の地が新潟県の旧和島村(現在は長岡市)です。 隣の出雲崎町の名主の家に長男として生まれたが、 18歳で剃髪し岡山県の寺で修行したあと諸国行脚をいたしました。38歳の頃に出雲崎に戻り、小さな庵で過ごしながら 仏道修行だけでなく書画をたしなみ、 また子供たちとのさまざまな逸話が伝えられているのは良くご存知と思います。 その後老齢で体も弱ってきたため篤志家のご厚意により和島村で晩年を過ごしたと伝えられています。

池浦酒造 外観

塔の最上階から見た風景

その旧和島村にある「池浦酒造」が今回ご紹介する酒蔵です。酒の仕込みが始まった11月に訪れたその酒蔵は、 稲が刈り取られた田んぼがずっと続く先に、紅葉の混じる小高い山を背にして建っていました。 その山の緑を背景に 土蔵造りの白壁と白い煙突が映える印象的なロケーションの中に、もうひとつ四角い塔のような建物が蔵の横に 建っているのが眼に入りました。 今まで幾つもの酒蔵を見てきましたがこのような建物を他では見たことがありませんでした。 写真でご覧いただけるようにそれは蔵の屋根を遥かに越える高さがあり、各階に窓が設けられていることで5階建てだと 分かります。
お聞きするとそれは、戦時中に航空燃料のアルコールを造るよう命令を受け、そのために建てられた蒸留塔とのこと。 今は全く使用していそうですが「和楽互尊」と、この蔵の代表酒名が書かれているその建物はここのシンボルにもなっているのです。

この酒蔵の創業は天保元年(1830年)ですから、良寛和尚が亡くなられる前年にあたります。お酒好きだったと伝えられる 良寛和尚ですが晩年は体も大分弱っていたと言いますから、この蔵のお酒を飲んだことは無いのかもしれませんが、 それにしても近くには良寛和尚のお墓や、書画や資料などを数多く収めた「良寛の里美術館」などもあり、この酒蔵には 和尚との眼には見えない何かしらの縁(えにし)を感じずにはいられません。

塔の最上階から見た蔵の様子

またこの辺りは小高い山で囲まれているため眺望が遮られていますが、実は海岸線から僅か1.5㎞程しか内陸に入って おらず、昔から行商の人達によって毎日新鮮な魚介類がもたらされ、またキノコや山菜やタケノコなど 四季折々の 山の幸など、良質な食材にも恵まれた地域です。従ってお酒も必然的に新鮮な食材の味を引き立てるような、 柔らかな口当たりのものが造られてきたのですが、 それを可能にしたのが、水に苦労している酒蔵からすると羨ましいほどの この蔵の水事情なのです。
その水は信濃川の伏流水ではないかと言われておりますが、この蔵の敷地の中には8本の掘り抜き井戸があり、 そのいずれもが深さ5~6mと浅く、どこを掘っても水が出てくるというくらい豊富のようです。 しかもその水は軟らかく、 酒造りにとても適した障りの無い円やかな軟水で、実際井戸を見せてもらったところ、直径が1.2mほどに丸く掘られた 井戸の地面から30㎝ほど下がったところに水面がありましたが、日によっては井戸の縁から溢れ出てしまうくらい水が 湧き出してくるのだそうです。

井戸

サーマルタンク

さて、この蔵の土蔵造りの建物は、その殆どが創業当時のものと言われていて、今は美しい白い壁も戦争中には目立たぬよう 色を黒く塗らされたり、また中越地震や中越沖地震などで被害を受けたため手直しをしたりしてはいるものの、 その骨格は 昔のままのようでいたるところにその歴史が感じられます。厳しい風雪に耐えながら、蔵を支えてきた柱や梁は180年の歳月を その黒く光る肌の中にしっかりと抱え込んでいるように思えます。
しかしその建物の中におかれている大小18本の仕込みタンクは、全てがサーマルタンクという温度管理を自動制御によって 行うことができる設備が整っています。それは仕込み水が軟水のためじっくり発酵させなければならず その間の温度管理が とても大切であることや、その後の貯蔵温度も酒の品質に大きく影響することから、温度管理のために大きな設備投資を したのです。 とは言うもののこの蔵の酒の仕込みは殆どが手作業で行われていて、あらゆる酒造りの工程に人の手が 関わっていて、未だに米は大きな和釜に乗せられた甑(こしき)で全量を蒸米しています。

 

池浦隆太郎社長と池浦隆会長

このようにこの酒蔵の酒造りは手づくりを基本として、一本一本を丁寧に慎重に造ることを旨としています。このことは、 代々とても謹厳実直な当主が続き、堅実でお客様を大切にした酒造りが行われて来たことが伝えられていて、 その歴史の中で大切に受け継がれてきていることなのです。中でも昭和初期に当主となった五代目の隆右衛門氏は、 近代的な酒造りを目指し技師を招聘して研究所を建てたり、木樽をタンクに切り替えたり、 新たな設備を導入して 四段仕込みに取り組むなど社業に励む一方、日蓮宗の妙法の真髄に傾倒し「妙法正宗」との商標を登録するほど信仰心の 厚い方だったようです。 その後同氏は、長岡で活動していた野本恭八郎氏が唱えた「互尊思想」に触れ、 その精神を広めるため野本氏からの勧めで「互尊」の商標に改めましたが、後に陽明学者の安岡正篤氏から 「互尊なれば和楽到る」とした方が良いとのアドバイスを貰い、「和楽互尊」を代表銘柄にすることにしたと言うことです。
この「和楽互尊」は、酒名としてはとても硬い感じのする古めかしいもののように思いますが、 いかにもこの酒蔵らしい生真面目さと高潔さが伺える素晴らしい酒名だと思います。

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